現代文化論叢

現代文化への「解釈」を探究する

2019夏アニメ総評

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「荒ぶる季節の乙女どもよ。」は、思春期の女子高生の姿を丹念に描いているのみならず、殊に最終回の描き方について言えば2019年随一の傑作と言っても差し支えないだろう。

「ありふれた職業で世界最強」は、異世界系の中でも、恵まれないタイプの異世界召喚を描くわけだが、そうした作品は既に枚挙にいとまがなく、既視感を覚える。そういった過去の作品とこの作品を分かつのは、主人公の境遇のエグさだろうが、そうしたエグさにも作為的なものを感じ、結局主人公のナルシシズムに貢献しているだけのように思われる。

異世界チート魔術師は、端的にストーリーがつまらないだけでなく、それと同時に作画が酷い。およそ時流から10年は遅れているような作画に、クラクラしそうになるわけだが、それを我慢させてくれるストーリー上の巧みさもないだけに、見るだに辛い。

「彼方のアストラ」は、SFとして取り扱えば、その仕掛けには面白さがあるところだけれど、SFとして取り扱えばこそ、そのテーマを更に深堀りできた感が惜しい。これはアニメ化された際のどうこうというより、原作の問題だろう。クローンのアイデンティティという問題を深堀するにせよ、クローンを作られたオリジナルのアイデンティティという問題を描くにせよ、この作品はその点で浅かった。

「可愛ければ変態でも好きになってくれますかは、典型的なハーレム系ラブコメで、これといった面白みもない。強いて言えば、主人公を取り巻く女性たちが「変態」という点だが、そもそも「変態」と読んでいいのかはかなり微妙だし、面白くない。

「女子高生の無駄づかい」は、コメディとしては「あそびあそばせ」以来の白眉であろう。耳に残るオープニングにせよ、ストーリーにせよ、コメディとしては素晴らしい完成度である。

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅡ」は、1期と比べると、格段につまらなくなった。展開もそうだが、全体的に中だるみの感が否めない。

ダンベル何キロ持てる?」は、ストーリーはつまらないものの、随所にちりばめられたネタは面白いし、一種のコントとして捉えれば面白いだろう。

通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?は、別にマザコンアニメというわけでもないと思うのだが、過干渉な母親が、笑えない水準に〝深刻〟に思える。全体的に作画にも甘さが見える。

「魔王様、リトライ!」は、異世界系としてはなかなか面白い作品で、見るに値する作品だろうと思う。主人公の年齢が、通常の平均よりもだいぶ上回っており、そうした「大人」ならでは冷静さが物語を、一種のハードボイルドとして昇華させている。

「まちカドまぞく」は、コメディでありながら、ヒロインが〝努力〟する様に、軽妙な朝ドラのような面白みを覚える。コメディでありながら、なかなか現実的でシュールなネタをぶっこむあたりが面白い。