現代文化論叢

現代文化への「解釈」を探究する

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

映画『ディーン、君がいた瞬間』:気怠さと短命

人には、短命と長命とがある。 極めて普通のこのことが、私たちにとって究極の不平等と、究極の平等を突きつけている。究極の不平等とは、まさしく寿命の長短であり、寿命が短ければ当然、幸福も少ないだろうし、長ければ幸福も多いだろうという不平等を指す…

2019秋アニメ総評

2019年秋クールのアニメは、不作の感が否めない。 「俺を好きなのはお前だけかよ」は、典型的なラブコメラノベを逆手に取ったような構造になっており、前半は「よくあるラノベ」をズラしていく面白さがあった一方、後半は、むしろその「よくあるラノベ」的な…

ジャニヲタ研究大事典03:「担降り」「推し変」

本稿では担降り、みうごん、りいざ、匂わせ、有名希望、推し変について解説を行う。

映画『ある少年の告白』:Do you want to change?

この映画は傑作とは呼べないかもしれない。傑作を生みだしうる題材なのに。しかし得てして「事実は小説よりも奇」なるものであると同時に、事実は小説よりも「面白くない」ものである。 しかし、この作品が僕たちに突きつけるテーマは、それ自体熟考に値する…

2019夏アニメ総評

「荒ぶる季節の乙女どもよ。」は、思春期の女子高生の姿を丹念に描いているのみならず、殊に最終回の描き方について言えば2019年随一の傑作と言っても差し支えないだろう。 「ありふれた職業で世界最強」は、異世界系の中でも、恵まれないタイプの異世界召喚…

【随想】価値のアナーキー、あるいは高級チョコよりキットカットがおいしいという件について

大抵の物はピンキリで、高級品もあれば廉価な品もある。もちろんそれは値段に留まらない。例えば哲学者や小説家にしたところで、一流から三流まで、幅広くいる。 僕が唐突にそういうことを思ったのは、ふと聞いていたとある配信で、「高級チョコを食べてもキ…

ジャニヲタ研究大事典02:ジャニーズとSNS

本稿では、ジャニーズにおけるSNS、絡み垢、也、安定、デタカ、私信について解説を行う。

映画『心が叫びたがってるんだ。』:山の上の城の意味

この作品について、まともに批評したブログというのに巡り合わなかった。 「考察」とは名ばかりで、その実際は中学生レベルの「感想」であるようなものや、「感想」と呼ぶのも憚られるようなレベルの低いものばかりだった。 ◆ まずもって、この作品が称賛さ…

アニメ「冴えない彼女の育てかた」はなぜ最悪なのか

アニメ「冴えない彼女の育てかた」は、丸戸史明の同名ライトノベルを原作にした作品である。 主人公・安芸倫也を中心に、サークルとしてゲームを作成していく高校生たちの姿が描かれる。 ◆ 僕が、種々の浅薄な反論を想定しリスクヘッジして、より温和なタイ…

【随想】新自由主義者と2つの討論をして分かったたった1つの真実

LINEにオープンチャットという機能が追加されて、まだ日が浅い。少なくとも僕がこの記事を書いている頃は、まだぜんぜん世間に浸透していない。だが僕は、あるときふと思い立って、ある哲学カフェを称するオープンチャットに参加した。 当然、多くの人の予想…

アーレント『人間の条件』01:〈活動的生活〉と人間の条件

アーレントは、「人間が地上の生命を得た際の根本的条件」に対応しているとして、〈活動的生活〉を3つに分類する。それが、①労働、②仕事、③活動である。 第一に、労働laborとは「人間の肉体の生物学的過程に対応する活動力」と定義される。つまり、人間は排…

ジャニヲタ研究大事典01:「ヲタク」

本稿では、ヲタク、推し、推し事、○○担、単推し、箱推し、強オタ、強火担、貢ぐ、茶の間、数字、露出、回す、ファンネ、アラシック、とびっ子、俺足族といった語について解説を行う。

映画『パラサイト 半地下の家族』:ギウはなぜ笑ったのか、あるいは象徴的な何かについて

本当に良い作品に触れた後、アルコールを飲んだ後のような多幸感に包まれる。この恍惚は、何も作品の筋立てがもたらす多幸感ではない。むしろ、そうした作品は、受容者に絶望的な何かを突きつけることも少なくない。 しかし、ただその法悦は、カラヴァッジョ…

アメリカ民謡研究会Haniwa序論:「理論を知らぬ愚者の、ただ1つの旋律。」を聴く

理論を知らぬ愚者の、ただ1つの旋律。 / 結月ゆかり ここまで来れば分かるでしょう。この楽曲は、音楽の一回性に挑戦して、「再現性ある音楽」の可能性をこそ実験しているということに。 アメリカ民謡研究会Haniwa序論:「二台のドラム、一本のベース、合成…

仮面ライダー原論

仮面ライダーとはいかなるヒーローか。 このような問いかけは、幾度となく繰り返され、その度に幾度となく答えが出され、幾人もを納得させてきた。 そうした解釈のほとんどが、おそらく正しい。 そうした解釈の、ほんの一部に目を通しただけであるが、この先…

【随想】新型コロナウイルスが関わるとなぜ人は馬鹿になるのか

新型コロナウイルスは、感染し、インフルエンザよりも高い確率で人を死に至らしめるウイルスであるという以上に、それに関わり、そのことを考えた人を馬鹿にするウイルスなのではないか。 その疑念がこの数日頭から離れない。 PCR検査をめぐって まずそのこ…

review01:津村記久子「行列」『新潮』

『新潮』2019年9月号に掲載された津村記久子「行列」は、同号に掲載された千葉雅也「デッドライン」よりも、ちょっと感動的なまでに良くできている。 内容は至極単純で、主人公の「私」(小川)が行列に並ぶという話である。冒頭は次のようである。 終電で最…

アメリカ民謡研究会Haniwa序論:「四弦奏者のための、孤独の奏法。」を聴く

四弦奏者のための、孤独の奏法。 / 結月ゆかり 僕はこれまで2回の記事で、アメリカ民謡研究会Haniwaの楽曲における「再現性」と「ジャンル自体への疑い」というのが鍵になってくるという風に述べました。そして、そうした音楽を無化するような取り組みに比…

ジャニヲタ研究大事典00:ジャニーズは文学である

ジャニーズは文学である。それは、2点においてそうなのだ。今後ジャニヲタについて考えていく上で、踏まえなくてはならない事情について概説する。

アメリカ民謡研究会Haniwa序論:「VOCALOIDと区別される音楽の解釈。」を聴く

VOCALOIDと区別される音楽の解釈。 / 結月ゆかり 前回、「二台のドラム、一本のベース、合成音声よりあなたへ。」を聴いたときに、この楽曲の特質は、音楽の一回性を否定してみせ、「実験」として再現性を持っているところにあるという話をしました。 今回の…

ドラマ「同期のサクラ」はなぜかくも感動的なのか

遊川和彦の作品は嫌いだ。理論的に、僕はそのように結論を出す必要がある。 僕は、「家族」という存在を過剰に重視するような現代社会に対して危機感を抱いているし、「家族」というものをそれほど重視していない。 しかし、遊川和彦は「家政婦のミタ」や「…

アメリカ民謡研究会Haniwa序論:「二台のドラム、一本のベース、合成音声よりあなたへ。」を聴く

二台のドラム、一本のベース、合成音声よりあなたへ。 / 結月ゆかり アメリカ民謡研究会Haniwaの曲を順番に聞いていこうと思います。今回はその第一弾です。 僕は彼の楽曲がどういう順番で投稿されたのか、詳しく知らないのですが、とりあえずYouTubeで一番…