現代文化論叢

現代文化への「解釈」を探究する

ジャニヲタ研究大事典02:ジャニーズとSNS

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ジャニーズのタレントに、SNSの使用は認められていない。もちろん、公式アカウントが開設される場合もあるが、私的なアカウントは持っていないという建前になっている。

LINEにおいてすらそうで、ライブのMCなどでは、そうした言葉が全て「メッセージアプリ」などと言い換えられている。

一方で、ジャニヲタにとって重要なのは、「実はアカウントを持っているのではないか」という問題である。

その中で、半ば都市伝説的に信じられているのが、絡み垢の存在だ。垢はネットスラングとしての「アカウント」であり、ジャニーズのタレントが、事務所には内緒でファンと交流するためのアカウントを作っていると言われている。

管見の限り、私は絡み垢のどれかを発見したことはないが、その存在自体が、まことしやかに囁かれている。

一方、そうした絡み垢を見つけたとしても、それが本物の「絡み垢」とは限らない。別の誰かがなりすましている可能性がある。そういったなりすましのアカウントを「なり」との音通からと呼ばれている。

也のアカウントの特徴としては2点挙げられる。

第一に、そのフォロワー数が多い。これは、ファンの間でも比較的その情報が流通しやすいためであり、本物のアカウントは事務所への発覚を怖れ、フォロワーの数は少ないものとされる。

第二に、専用のハッシュタグを持っている場合が多い。そうしたハッシュタグをつけてファンが投稿すれば、その投稿は見ている、という建前になっており、中には既読の印に「いいね」を押す場合もある。

一方、こうした也アカウントは、あくまでなりすましのため、実際にはタレントがライブしている時間や、その直前である時間に投稿してしまったりすることがある。

 

     ◆

 

ジャニヲタはSNSをどのように活用するのか。

もちろん、ジャニヲタはファンコミュニティを形成するが、そこには「同担拒否」などの複雑な関係があり、別の機会に改める。

そのなかでもジャニヲタ同士の関係に安定と呼ばれるものがある。

例えば、本人がAというタレントを推しているとき、Bというタレントを推している別の友人を安定と呼ぶ。安定がいると、同じくBというタレントを推している人とは仲良くならないか、その関係には深入りしない。

この「安定」は、「幸せになってほしい子」のように言い換えられることがある。つまり、その友人が、推しの対象であるタレントと、「幸せになる」ことを望んているという意味である。

先ほどの例に戻れば、Bというタレントを推している友人が安定であり、「幸せになってほしい子」であるにも関わらず、同じBというタレントを推している別の友人と仲良くなることは、不義理となるのである。

そうしたファンコミュニティで行われるのが、デタカの交換である。

デタカとは、雑誌につくデータカードと呼ばれるもので、タレントの写真と基本的な情報が記された、花札ほどのサイズのものである。

ファンの間では、お互いの推しのデタカを集める。

Aというタレントを推す人は、友人からAというタレントのデタカを集め、反対にBというタレントを推す友人に、Bというタレントのデタカを渡す。

これには2つの効果があると思われる。

第一に、後の紹介する同担拒否のような場合、自分の推しのカードが、他の人の手元にあるのを許せないという独占欲。

第二に、自分の推し事が、集めたデタカの量に可視化される点である。

 

     ◆

 

ジャニーズとSNSというテーマであるが、何より押さえておくべきは、彼らがエゴサーチをしていること自体は認められているということである。

そうしたなかで、ジャニヲタは当然、自分の投稿がタレントの目に触れることを承知している。こうした場合や、あるいはファンレターに書いた内容が何らかの形で反映された場合、これを私信と呼ぶ。

例えば、「○○の髪型は△△がいい」とSNSに投稿したり、ファンレターに書いたあと、実際に○○が△△の髪型をしたとき、それを私的なメッセージ=私信であるとして受け取るのだ。