現代文化論叢

現代文化への「解釈」を探究する

ジャニヲタ研究大事典01:「ヲタク」

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ヲタクとは、ある特定の人々やものに対して愛情を持ち、その愛情を捧げることに充実感を覚える人々のことである。

表記についてであるが、ここでは「ヲタク」と表記する。「オタク」と「ヲタク」の表記の差については、様々な先行論があろうが、ここではそれを参照しない。つまり「オタク」と「ヲタク」は同意であるとして用いる。

また、「ヲタク」という語の定義についても、様々あるだろうが、それは現在では意味をなさないものも多いのではないか。というのも、ヲタクとはあるクラスターに対する蔑称として、三人称的に用いられていたものが、近年では、一人称的に、自称するために「ヲタク」と用いられるようになりつつある。

そうした事情が、定義を難しくしている。すなわち、そのヲタクを自称する際の基準は、あくまで主観的なものに限られる。つまり、何らかの定義を作れば、その定義を満たしていない「ヲタク」を自称する人々の存在が、その定義を無化する。

そこで、もっとも広範な意味を持つであろう定義を、上に記した。

 

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さて、ヲタクとは人々に対する名称であるが、その人々が施行する対象は推しと呼ばれる。そうした推しを愛好する行為のことを、「お仕事」との音通から推し事と呼ぶこともある。

また、ヲタクは往々にして、自らの推しを冠し、「○○担」を自称することがある。例えば、木村拓哉が推しである場合には、「木村担」や「拓哉担」といった具合である。

このように、具体的にただ一人の推しがいる場合、その人々を単推しと呼ぶ。その対となるのは箱推しであり、具体的なただ一人を推すのではなく、グループ全体を推す場合に用いられる。

そうしたヲタクの中でも、なんとなく凄そうなヲタクのことを強オタと呼ぶ。また、その愛情が苛烈である場合は、強火担と呼ばれる。

この強火担は、普通、ジャニーズのタレント同士の関係に用いられる。例えば、Aというタレントが、Bという先輩タレントの激烈なオタクである場合、「Aは強火B担」と言うわけである。

 

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ヲタクに求められるのは何か。

ヲタクにおける「推す」という行為は、単純に「愛好する」ということと同義ではない。たくさんの宗教がそうであるように、「信仰」にはそれに伴う行為が求められる。

つまり、ヲタクに求められるのは、具体的に言えばお金を使うことである。これを貢ぐと呼ぶ。

ジャニヲタにおいても、貢ぐことが求められるのだが、例えば、AKB48のような女性アイドルグループが、SNSや動画配信サイトを使えば、そこに投げ銭できるのに対し、ジャニーズの場合は、貢ぐことが難しい。

ヲタクがお金を使うために現場(後述)に参戦したりする一方、そうしたライブやコンサートに行かず、テレビやYouTube、雑誌だけで応援するヲタクのことを茶の間と呼ぶ。これは程度の低い推し事と捉えられる一方、ライブに参戦するなど貢献していないヲタクに対して、侮蔑的に用いられることもある呼称である。

一方で、ジャニヲタに求められるのは、数字である。まるでどこかの営業職かのような言葉に聞こえるが、数字とは、測ることができない「愛情」のようなものを、発売されたCDの販売数、コンサートやライブの動員数によって表現したものと言える。

そうした貢ぐ行為に加えて、近年影響力を増しているのが、YouTubeの再生回数である。既にデビューしたジャニーズのグループの中で、YouTubeの公式チャンネルを持っているのは嵐など数少ないが、ジャニーズJr.には公式チャンネルがある。

ここで、ジャニーズJr.の今後の露出や果てはデビューするかどうかにも影響を与える可能性があるのが、再生数である。

再生数を増やす作業のことを、俗に(再生数を)回すと呼ぶことがある。

こうした事情の背景にあるのは、あるグループを応援しようというファン同士の連帯感である。それを下支えする側面として、ファンネ(ファンネーム)がある。

例えば、嵐のファンを「病気sick」とかけてアラシックと呼ぶような例がある(嵐本人たちはそれを拒否していたという話もある)。他にも、Hey! Say! JUMPの「跳ぶjump」にかけたとびっ子や、Kis-My-Ft2の「足foot」にかけた俺足族などが有名である。