現代文化論叢

現代文化への「解釈」を探究する

ジャニヲタ研究大事典04:「現場」

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ジャニヲタの推し事の主たるものは、もちろん「愛情を持ち続ける」ことだが、それだけでは自らの「愛情」を表現することはできない。そこで必要とされるのは、具体的な行動である。

デビューしたジャニーズタレントなら(もちろんその中にも差異はあるが)いざしらず、デビューしていないジャニーズJr.などに対しては、テレビやラジオでの露出が期待できない。その中で大きな意味を持つのが、現場である。

現場とは、主にライブを指すが、場合によっては「少年倶楽部」などの番組の観覧番協(番組協力)が含まれることがある。

こうした現場に、ジャニヲタが向かうときには典型的とされる服装がある。管見のかぎり、その服装の共通項はフェミニンという以外に見つからないのだが、そうした服装は量産と呼ばれる。ここから、典型的なジャニヲタ自身を「量産」と呼ぶこともある。

また、ジャニヲタはそれが許されているライブであれば、いくつかのグッズを持っていく。例えば、ペンラ(ペンライト)やうちわである。

ペンラの中でも、「KING BLADE」と呼ばれる商品は、特にキンブレと呼ばれる。ここにキンブレシートと呼ばれる、透明なシートに文字を施したものをセットすることもある。そこに書かれるのが、自分の推しの名前であることもあれば、自分の推しにしてほしいファンサ(ファンサービス)であることもある。(もちろんうちわにも希望するファンサが書かれることはある)

ペンラの場合、その色は自分の推しのメンバーカラーにする。よって、ライブ会場ではパッと見たときに、推しの数が可視化されることになる。ジャニーズとしても、自分のヲタクを簡単に見つけられ、集中的にファンサすることができるのである。

また、ファンとしても、ライブに行く前に、自分の推しが舞台のどのあたりによくいるのかを知りたいものである。つまり、自分の推しが全然来ない方向で待っていても、意味がないからである。

そこでヲタクが事前に下調べする上で期待するのが、既にライブに参加したヲタクのレポ(レポート)である。

また、このレポではMCの内容も期待される。MCは、録音が認められていないライブ会場において、一回きりのものであり、「○○と言ったらしい」という噂が重要になる。

あるいは、髪型を気にする場合もある。自分がライブに参加しない日の髪型は、見ることができない場合が多いからである。

もう一つ重要なのが、セトリ(セットリスト)である。ライブの曲順を事前に知っていることは、ライブに参戦する上で欠かせない。ジャニーズの曲に合いの手式のコールが期待される場合は少ないが、事前に知っているかどうかではだいぶ事情が異なる。

これについては特殊な場合もある。例えば、ジャニーズJr.のHiHi Jetsは、メンバーの猪狩蒼弥の発案で、セトリをネットで公開しないようファンに求めた。これを本人は「はいはいじぇっつVSハイレベルな女! ワクワク セットリスト内緒だよ! ゲーム!」と呼んでいたが、実際、ネット上でのセトリの流出はかなり少なかった。

そこから考えれば分かるように、ジャニヲタにおいて大切なのは、1公演でも多く、現場に参戦することである。ここから、複数の公演に参加する場合、これを多ステ、全ての公演に参戦する場合、これを全ステと呼ぶ。

 

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ジャニーズのそうしたライブのばあい、ライビュ(ライブビューイング)がされることも無いわけではないが、そもそも自分の貢ぐ先を求めているジャニヲタは、その円盤化を求める。

ライブであれば円盤化それずとも、ライビュや配信で我慢できるかもしれないが、舞台となればそうしたサービスは見込めず、DVDの発売を期待することになる。それが円盤である。